会いたかったよ、ずっと。

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重なっている手の、上になっている手の指に俺の指を滑り込ませて絡める。 「ぅあ、せんせ…」 困惑している彼女を無視し、繋いだ手を引っ張る。 「…いいに決まってるでしょ、じゃなきゃここにいないよ」 そう言うと納得したのか安心したのか、かぁと頬を赤らめて大人しく俺について来た。 …はぁ。 これはヤバいな。 ここまで自分の言動で一喜一憂されると。 彼女がいかに俺を想ってきたのかが、ひしひしと伝わってくるようで、胸が苦しくなる。 助手席に彼女を座らせて、エンジンをかける。 俺がコーヒーをすすっていると、それに倣ってか、彼女もカフェオレを口にする。 「…さて、どこ行く?」 なんかこのままだと沈黙が続きそうだったので、俺から話題を振る。 「うんと、とりあえずなんか食べたいです!」 急に元気になった彼女を見て、ついつい笑いが出た。 「な、なんで笑うんですか?」 「いや、急に元気になるから…」 そんな俺の態度が気に入らなかったのか、彼女は口を小さく尖らせた。
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