会いたかったよ、ずっと。

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「ごちそうさまでした」 「いえいえ」 二人並んで駐車場を歩く。 思えば高校の時は、こうやって並んで歩いたことはなかったように思う。 そうか、これからこうしていくためには…。 一歩踏み出すのは俺だ、と。 わかっているけど。 変な意地が邪魔する。 車に乗り込み、あとは帰るだけ、という雰囲気になってしまった。 エンジンをかけてアクセルを踏めば、たぶんもう、終わり。 「先生?」 シートベルトをしてから動こうとしない俺を不審に思ったのか、彼女が俺の顔を覗き込む。 その顔は、さっき大学の話をしていた、高校の時とほとんど変わらない、年相応の顔じゃなくて。 頬を赤く染めてはにかむ、俺の好きな顔じゃなくて。 俺が見たことの無い、大人の顔だった。 「……ッ」 その瞬間、いてもたってもいられなくなって自分と彼女のシートベルトを外し、彼女の細い腕を引っ張った。
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