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「…俺、振ったっけ？」
たぶん離任式のことを言ってるんだと思うけど。
「…振ったんじゃないんですか？」
「え、俺、振ったつもりないけど」
「え」
「…」
「…」
なんだ、この、間。
「…帰るか」
名残惜しい気がするけど、体を離してエンジンをかける。
「そ、…ですね」
うわ、その顔、反則でしょ。
冷房が入って冷え始めるはずの体が、また熱くなる。
なんでそんな、いかにも「帰りたくない」みたいな顔すんの。
…帰したくなくなるでしょーが。
「……また今度な」
ポンポンと彼女の頭をなでると、むすっとしながらも納得したような表情を見せる。
いや、そりゃあ、「お持ち帰り」したいけど。
フレンチしかしてないのに…ねぇ。
まぁ今回はお預け。
「連絡先だけ、交換していい？」
「あ、はいっ」
それだけで嬉しそうな顔をする彼女に、ずっとそのままでいて欲しいと願った。
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