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そう言うと、古賀先生は腕を組みながら窓の外を眺め始めた。
グラウンドに面した職員室からは、キャッチボールをする野球部や、サッカー部がゴールネットを揺らす様子が見える。
ルーズリーフに問題を解いていると、先生がふと口を開いた。
「向井さんは何部なの?」
「え?部活ですか?」
「うん、そう」
突然世間話を始めた先生が私の方を向く。
「えっと、文芸部ですけど…」
「文芸部!?」
目を見開く先生。
「…なんですか」
「いや、あるんだなと思って」
「失礼な。ちゃんと活動してますよ!部誌とかも発行してるんですからね。まぁ存在感ないですけど…」
文芸部は影が薄い。「帰宅部だよね?」とよく言われる。
まぁ実際、活動が週1だから、そう思われても仕方ないとは思うけどね…。
と。
「ははっ、向井さんは部活好きなんだね!」
「ッ」
「いーねぇ、そういうの!」
先生は真っ白な歯を見せて笑った。
あまりにも純粋な笑顔に心臓が踊り出す。
その笑顔は、あの時可愛いと思った、その笑顔で。
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