問1

16/37
前へ
/172ページ
次へ
そう言うと、古賀先生は腕を組みながら窓の外を眺め始めた。 グラウンドに面した職員室からは、キャッチボールをする野球部や、サッカー部がゴールネットを揺らす様子が見える。 ルーズリーフに問題を解いていると、先生がふと口を開いた。 「向井さんは何部なの?」 「え?部活ですか?」 「うん、そう」 突然世間話を始めた先生が私の方を向く。 「えっと、文芸部ですけど…」 「文芸部!?」 目を見開く先生。 「…なんですか」 「いや、あるんだなと思って」 「失礼な。ちゃんと活動してますよ!部誌とかも発行してるんですからね。まぁ存在感ないですけど…」 文芸部は影が薄い。「帰宅部だよね?」とよく言われる。 まぁ実際、活動が週1だから、そう思われても仕方ないとは思うけどね…。 と。 「ははっ、向井さんは部活好きなんだね!」 「ッ」 「いーねぇ、そういうの!」 先生は真っ白な歯を見せて笑った。 あまりにも純粋な笑顔に心臓が踊り出す。 その笑顔は、あの時可愛いと思った、その笑顔で。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加