問2

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「お絵かき大好きだったよー」と笑顔で語る先生。私は先生を凝視する。 「嘘だ」 「嘘じゃありません」 「だってこの前…!」 「この前?」 先生は何のことか分かっていないようだが、先生が美術の先生になろうとしてたのは嘘だと思える証拠が私にはある。 それは数日前の授業でのことだった。 「先生―、牛ってどんな感じでしたっけー?」 クラスの中でも賑やかな部類に入る男の子…というか以前のチャラ男といったほうがいいか…、金森君が発した言葉。 「え、何、牛の漢字?」 先生がそう返すと、「いやいや、絵です。イラストっすよー」ケラケラと金森君が笑う。授業中に何聞いてるんだろう…。 だけど先生は別に怒るわけでもなく、黒板に絵を描き始めた。 「あー…牛、牛ねー…はいはい」 ブツブツと呟きながら先生は手を動かす。 クラス全体が先生の絵に集中し始める。 どんな牛を描くんだろう。ドキドキし始めた頃、先生の手が止まった。 「こんな感じでしょ?」
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