問2

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ドン、と目の前に先生の腕が現れ、驚いて一歩後退する。 「向井さんさぁ、いい感じに俺が声掛けやすい所にいてくれたよね」 「は?」 心なしか先生の顔に、得意の意地の悪そうな笑顔が浮かんでいる。 「どこ行こうとしてたの?」 「え、帰るだけですけど」 「ふーん、じゃあまだ時間ある?」 先生は私が行きたい方向を自分の体で塞ぎ、逃げられないように壁に右手を突いた。 「あるっちゃあありますけど、なんですか?」 なんだこの、少女マンガみたいな体勢は。 あまり余裕のない私に対し、先生は呑気に長い脚を交差させている。 「手」 「は?」 「手、出して」 急に手出せなんて言われても…。 困惑と不審の気持ちを隠せないまま、恐る恐る右手を差し出す。 「そんな怖がんないでくんない?」 苦笑の表情で、先生はスーツのポケットを漁っている。 「あ、あった」 「え」 そう先生が言った瞬間だった。
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