問2

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入り口で立ち止まっている私の方に先生が近づいてくる。 今日の補習で会ったけど、近くで先生のことを見るのは久しぶりで、なんだか鼻の奥がツンとした。 「あの…、質問してもいいですか」 「あぁ、いいよ」 そう言って先生は奥に引っ込むと、紙を数枚とボールペンを持って出てきた。 「じゃあ行こうか」 「あの…!」 歩き出す先生の背中に呼びかける。 「何?」 「あの…、恵理ちゃんが一緒でもいいですか」 「恵理ちゃん?」 この時恵理ちゃんは傍にはいなかった。 少し離れてこっちを見ていると言い出したのだ。 「恵理ちゃんて?」 「え?波田野恵理ちゃんですけど…」 「あぁ…いいよ」 先生、恵理ちゃんの名前知らなかったんだ…。 この時私は不謹慎にも喜んでいた。 自分は特別かもしれない、なんて。
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