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そんな喜びは束の間だった。
今じゃあ先生は恵理ちゃんにつきっきりで、私のことなんか気にしている感じは一切ない。
「でもここは等号入りませんよね?」
「それはね…ここが等号で4が入っちゃうと条件に合わなくなるからなんだ」
「そうなんですか?」
しかも内容が本格的。
恵理ちゃんの訊き方は私と違って的確な訊き方だ。
分からないところがはっきりしていて、分からないところが分からない状態の私とは大違いだ。
話に入れないので、仕方なく持ってきた問題集の簡単な問題に取り組む。
私がわかれば、先生の代わりに教えられたんだけどな。
そうすれば先生と恵理ちゃんを近づけることがなかったかもしれないのに。
と。
「え、もうこんな時間!?」
急に恵理ちゃんが立ち上がり、スマホを操作する。
「ヤバい、バイトの時間!すいません先生、今日は失礼します。夏乃ちゃんも、またね!」
早口でまくしたてると、彼女はバタバタと教室から出て行った。
「…この学校、一応バイト禁止なんだけどな」
ボソリと先生が呟く。
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