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「せんっ、せ…っ!」
ここ、一応職員室なのに。
先生はどこか妙に大胆なところがある。
息も絶え絶えに顔を真っ赤にさせている私を見て、先生は満足したように離れていく。
最早むしゃくしゃした気持ちはどこかへいっていた。
「…波田野さんと仲良くなったんだね?」
「へ?」
先生は真顔になって首を少し傾けながら私の顔を覗き込む。
「だから、波田野さんと仲良くなったの」
「え、えと…なんというか…」
言えない。
協力のことは言えない。
「くっ、クラスの子と仲良くするのは当然じゃないですか!」
「…」
不満そうな先生に引き攣る笑顔を向ける。
「……」
はぁ、と先生はため息をつくと、私の頭に手を置く。
「無理すんなよ」
「…はい」
なぜ先生に「無理すんな」と言われたかはわからなかったけど、心配してくれたんだと前向きに考えておくことにした。
翌日も、そのまた翌日も私と恵理ちゃんは先生のところへ行った。
恵理ちゃんの質問はやっぱり的確で、私は隣で聞いていて惨めになることばかりだったけど。
恵理ちゃんが帰ったあとに先生が「質問していいよ」と言ってくれるので、少しだけだけど数学と先生に触れる時間が増えた。
そして、夏休みが終わる―――…。
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