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ぐんと伸びて、掻きながら、水の抵抗に抗い、顔を出す。
キラキラ光る水面を睨みながら息を喰らい、潜り込みながらぐんと蹴る。
身体に水を纏い、進む、進む。
ドンっ
壁を叩くようにして身体を起こす。
「相変わらずキレーな、平だな……」
苦笑いする丸顔の日に焼けた青年がプールサイドでぼやく。
「やっぱさ、泳ぎに行くで五十メートルプールってなぁ…………海行きたかった」
「お前は毎日サーフィングしに行ってるだろうが」
「まぁ、そうだけどさぁ……近いんだし、そろそろ海行こーぜ?」
潮の匂いがする風を嗅ぎながら
「俺はまだこっちで泳ぎたい」
と答える。
「あー……俺、泳ぐのも疲れたし、待ってるのも疲れたんすけど」
「じゃ、隣入れよ。イチコメな」
「は? まぁ、良いけど。ちょっと身体解させろよ」
ばしゃんと乱暴に飛び入り、そそくさと壁を蹴る。
あいつの身体がぐんと伸び、リズムを刻む。
身体が浮き上がり、その両手が羽根のように水面の空をかき分ける。
迫力があるのに静かな……綺麗なバタフライだった。
見ている内にあいつがターンをして帰って来る。
空を描いた手はしなやかに水に入り、ぐっと伸びて水を掴んで加速する。
ドンっ
隣のコースから伝わった衝撃。
「準備、いいぜ?」
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