熱中症

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 うだるような暑さが、まだ気配を残す宵の口……日は暮れたが、まだ明るい空を見上げた。  天頂は高く、鱗雲が群れを作って游いでいる。 「…………」 蝉の声に混じって、遠くの花火の音が風に乗って聞こえてくる。  見えるかな。と思って、見回すも目的のそれの姿はなく……ただ、昇り始めの月が異常に大きく、妖しく光っていた。  少し眺めたものの、退屈をして視線を戻す。  昼の間、部屋でごろごろとしていた。  熱で溶けた脳ミソは耳か何処からか、流れ出たらしい……いや、汗になってしまったのか。  下らない思考のままに足を進める。  夏に何かなんて、無い。  学校が無い分、ぼんやりと生きる他ない自分が嫌になる。  生きてるか死んでるかと言えば、死んでいる。  思考は余熱に浮かされたまま空回る。  イベントなんて、遭遇(エンカウント)する訳もなく、寧ろ熱気に殺された方が良いかとエアコンの付けない部屋で水も摂らずに死んでいた。  文字通りに死は来ずに、オレはこうして歩いている。  煽った麦茶の味が喉奥に引っ掛かっていた。  しかし、どうもなんだか無感動だ……肌を撫でる風に何も思えない。  ああ、そうだ。脳ミソが溶けたから空虚なのだ。実につまらない。  コンビニで木の棒の付いたアイスとラムネを買った。
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