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学園の長期休暇と両親の有給休暇を使った家族旅行。今日までの五日間、僕達は第三十八管理世界のリゾート地に滞在していた。
久し振りの家族水入らずの旅行も今日でお終い。現在は次元空間航行旅客船の中。レアスキルの研究所の所長を勤める父と、その助手の母は、休んだ分明日から忙しくなる、と嘆いていた。
「ねえ、お兄ちゃん」
隣の座席から僕の事をそう呼ぶのは四つ年の下の妹、リーティア。肩まで伸びるクリーム色の髪に、見る人に活発そうな印象を与えるサファイアの様な蒼くパッチリした瞳。身内贔屓(みうちびいき)無しにしても可愛らしい自慢の妹である。
「ん?何だ?」
「帰ったら組手に付き合って欲しいんだけど……」
彼女はディメンジョン・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション、略してDSAAというスポーツ競技の運営団体が主催する公式魔法戦競技会、インターミドル・チャンピオンシップに毎年出場している。
その練習として、僕はしばしば組手に付き合っているのだ。
「別に良いけど、帰って早々練習か?」
僕は少し呆れながら言うと、リーティアは元気よく答えた。
「うん。たくさん練習して今度こそエレミアさんに勝つんだ」
ジークリンデ・エレミア。リーティアは毎年、彼女と当たり、そして敗れている。去年は出場していなかった為、リーティアは都市本戦まで進むことが出来た。
「そうだな。確かにそれなら休んでる暇なんてないな」
ジークリンデ・エレミアは世界代表戦で優勝を経験している、言わば別次元の実力者だ。
「だから、たくさん練習に付き合ってね」
笑顔でそう強請(ねだ)るリーティア。
「ああ」
そんな彼女に僕も笑って返すのだった。
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