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「いやぁあああああああっ……!!!」
誰かの悲鳴を皮切りに、人々は我先にと脱出ポットに群が利始める。その中には乗務員も含まれていた。そこには秩序なんて物があるはずもない。
正気を保っていた乗務員は利用客と魔導師の間に割って入るが、所詮は旅客船の乗務員。あっという間に全員地に伏せてしまった。
すぐ横には、僕の腕に捕まって震えるリーティア。
震える手を制して、リーティアを僕から離れさせる。
「……お兄ちゃん?」
リーティア不安そうに僕を見上げた。
「リーティアは先に脱出ポットへ行ってて」
返事を聞かずに、デバイスをセットアップする。リーティアの練習用に購入した杖型のストレージデバイスである。
僕は魔導師達に直射系の射撃魔法を四発放った。発射されたソフトボールよりも少し大きい魔力の球、スフィアは敵のバリア魔法に防がれるが、僕はその間に敵へ肉薄する。
「バリアブレイクッ……シュート!」
バリアブレイクという技法を使い、突き出したデバイスがバリアを突破すると、僕は再び射撃魔法を放つ。
同じ直射型ではあるが、今回はスフィアの周りに魔力の幕を張り、命中しても消滅しないようにした。その為、直線上にいた敵魔導師全員を撃ち抜き、スフィアは消滅する。
まだだ!一対多数である以上、僕は止まったらそこで終わる。
座席の陰に飛び込むと、さっきまで僕の居た場所を射撃魔法が通過した。
僕は相手が押し寄せてくる前に、座席よりも上にスフィアを発生させ、牽制をする。
相手が無闇にこちらへ来る様子は無い。ここまでは想定通りだ。
精神的に余裕が出てくると、自分が肩で息をしている事に気付く。
恐らく、相手は非殺傷設定なんて使っていない。ここで負けるということは死を意味している。
改めて認識すると、また手が震えてきた。体が上手く動かず、まるで自分の物ではないかのような錯覚を覚える。
僕の中が恐怖一色に染まった瞬間だった。
「うわぁあああああああああっ……!!」
自分では制御しきれない程、大量のスフィアが辺りを埋め尽くし、縦横無尽に飛び交う。コントロールもあったもんじゃない無差別攻撃。幸いにも現在、客室には僕と侵入してきた魔道士だけだった。
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