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…………
「なぜだ? なぜ女がいない。というか人っ子一人いない」
俺は路地裏を出て大通りに出た。そのはずだ。なのになんだ、この結果は。これでは意味がない。
どうしたものか。うーん。
「エロ色の強いラブコメの主人公になりたい!!」
俺は唐突に叫んだ。気にするな。いつものことだ。
あんな特異体質に一度、いいや一生なりたい。美少女を惹きつけるという男の夢を体現したような主人公に。
美少女の全裸をタイミングよく見れたり、ぶつかるだけで身体を押し倒して胸を揉んでいたり、パンツに顔を突っ込んでいたり――――ありえないだろ!!
どんなぶつかり方したらそんなことになるんだよ!! ったく、羨ましいにもほどがある。
女の子が多いこの王国ならもしかしたら……という期待が現実になることは、今、この状況ではもう既にありえない。
まあ、女の子がいても実現するわけないが。
そんなくだらないことを考えていた。というか、こう人がいないと妄想くらいしかすることがない。
「さて、どうするかな」
俺は当てもなく大通りを歩き始めた。
大通りはさすが世界の一、二を争う大国だなと思うものだった。
見渡す限りレンガの家が建っていて、石畳が続く道の両脇には果物や魚貝類の露店、更には雑貨から、何でも揃った店が軒を連ねている。
だからなぜ人がいない? 店の人とか。昼寝か?
「ほんと、人のいなさに泣きそうになるぜ。いっそ爺さんでもいいからよお」
肩を落として歩いていると、後ろから人の声がした。叫び声が。
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