第Ⅰ章-夢の楽園を探しながら-

3/40
前へ
/40ページ
次へ
 ………… 「なぜだ? なぜ女がいない。というか人っ子一人いない」  俺は路地裏を出て大通りに出た。そのはずだ。なのになんだ、この結果は。これでは意味がない。  どうしたものか。うーん。 「エロ色の強いラブコメの主人公になりたい!!」  俺は唐突に叫んだ。気にするな。いつものことだ。  あんな特異体質に一度、いいや一生なりたい。美少女を惹きつけるという男の夢を体現したような主人公に。  美少女の全裸をタイミングよく見れたり、ぶつかるだけで身体を押し倒して胸を揉んでいたり、パンツに顔を突っ込んでいたり――――ありえないだろ!!  どんなぶつかり方したらそんなことになるんだよ!! ったく、羨ましいにもほどがある。  女の子が多いこの王国ならもしかしたら……という期待が現実になることは、今、この状況ではもう既にありえない。  まあ、女の子がいても実現するわけないが。  そんなくだらないことを考えていた。というか、こう人がいないと妄想くらいしかすることがない。 「さて、どうするかな」  俺は当てもなく大通りを歩き始めた。  大通りはさすが世界の一、二を争う大国だなと思うものだった。  見渡す限りレンガの家が建っていて、石畳が続く道の両脇には果物や魚貝類の露店、更には雑貨から、何でも揃った店が軒を連ねている。  だからなぜ人がいない? 店の人とか。昼寝か? 「ほんと、人のいなさに泣きそうになるぜ。いっそ爺さんでもいいからよお」  肩を落として歩いていると、後ろから人の声がした。叫び声が。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加