第Ⅰ章-夢の楽園を探しながら-

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 俺のことを完全に忘れて天使と悪魔は子供のような口喧嘩を始めた。  天使柄悪過ぎだろ。  本当にどうかしちまったか? 俺の頭は。  無防備な女の子がいるっていう突然過ぎる嬉しい状況で壊れて螺子でも飛んだか?  口喧嘩が終わったのか俺の方に二人の矛先が戻ってきた。 「ロード、悪魔なんかに唆されるなよ? 何年もシャバの空気吸えなくなるぞ!!」 「捕まるぐらいどうでもいいだろ。ロード、お前の最初の目的を忘れたわけじゃないだろうな? この機会を逃す手はねえぜ!!」  二人の間に火花が散っている。 「ええい、五月蝿い、五月蝿い! 五月蝿い!! 俺はどうするかもう決めている。黙って見とけ!!」 「…………」  二人は黙った。  俺は倒れている女の子に手を伸ばした。そしてそのまま彼女を抱え上げた。  そして身体と左手で彼女の身体を支え、空いた右手を胸の方へ伸ばした。 「おい、ロード。止めろ! 早まるな。それによく思い出せ。その子が最初になんて言ってたか。た――――」 「お前は黙ってろ。いいぞ、ロード。そのままヤッちまえ!!」  悪魔は天使を抑え込んで叫んだ。  俺は倒れている女の子に手を伸ばし、彼女を抱えるようにする。  そしてそのまま胸に手を伸ばす。    あと十センチ、  九センチ……  五センチ……  三センチ、  二センチ、  一センチ。   「やめろーー!!」  ドォォォォン!!  天使の叫びと同時に後ろの方で、なにか大きな音がした。  その音で俺の手は止まり、後ろを振り向いた。 「…………!? 嘘……だろ?」    あまりの驚きでそれ以上声が出なかった。  嘘だろ?  あんなの現実にいるのか?  架空の生き物だぞ!!  ギャォォォォーー!!
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