何気ない平和な一日

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ジリリリリ、ジリリリリ 5月6日の朝を告げるベルが鳴る。 ジリリリリ、ジリリん 「お兄ちゃん、朝だよ起きて」 「……………………」 「お兄ちゃんってば」 時計を止め、楓リコは楓正樹を揺する。お兄ちゃん好きなのは十分わかった。しかし 「…………男子寮に入るのはまずいだろ、リコ」 かわいい妹を注意するのはお兄ちゃんとしては非常に心が痛い。だが楓正樹はそんな苦痛に耐えながらも妹に冷たい視線を送る。 「お兄ちゃんが遅刻してるから迎えに行けって部長さんに言われて来たんだよ。なのに……なのに」 少し涙目になる妹と顔を合わせることに耐え切れ無い楓正樹は枕に顔を埋め、お兄ちゃんだってつらいんだ~、と涙でシーツを濡らす。二人そろって涙する朝となった。
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