緊張の水曜日

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「1時間はハンコ持たなくてもいいから部屋にハンコ置いてくれば大丈夫なのに、フフンフンフン、フフフン」 工藤浩二は湯に浸かり、呑気に鼻歌。だが楓正樹はあまり乗り気ではない。 1時間は持たなくていいではなく、1時間しか離してはいけないのだ! ハンコを肌に触れさせない時間は楓が考えついた、いわば『無敵状態』。体を通して信号を送るということは自分のハンコが肌に触れていなければ同じ色のハンコを押されても大丈夫。 しかし仮に59分身を守るため故意に離し、誤って2分ハンコ無くすとゲームオーバー。貴重な1時間なのに、楓正樹は中途半端に教えたことを後悔した。 「今日も教室とか廊下の空気重かったね」 楓の不安など知るよしもなく、工藤は淡々と話す。 「ポケットに手を入れたら怪しまれ、かと言って手を出したらハンコ押されるかもと恐怖。ハンコゲーム恐るべし」 「工藤は相変わらず呑気なもんだな」 「正樹も負けてないですよ。今日もシスコンで黒髪フェチのキャラにブレがなかったであります、波平さん!」 工藤は波平こと菅波洋平に敬礼、二人は楓を小ばかにする。
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