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「おい」
呆れた、疲れがにじんだ声で呼ばれた
振り返ると同じクラスの鞠野が立っていた
「なに、鞠野」
早く話を終らせるためになるべくめんどくささを感じさせる投げやりな言葉を出した
早く、手袋をしたい
廊下は寒く、手先が空気で冷たくなる
そんなわたしのことを知ってか知らずか鞠野は言葉をつまらした
「鞠野」
「あのさ、」
鞠野を呼ぶわたしの声と彼の声がかぶった
「なに」
わたしは同じことを繰り返した
「…やっぱ何もないわ」
「なに、早く言おうよ」
わたしが急かすと
「だって…」 と鞠野の声が自信なさげに響く
「柚木寒いだろ」
「あ、鞠野分かってたの」
思わず声にだして言う
「分かるよ、見てれば」
鞠野はそう言い小さく笑った
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