オアシスの夜

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綺麗に並べられた野菜は黄色く縮こまり、水田には大きなひび割れが出来、崩れた山々は日に日に地肌を現し始めた。 道端に生えていた雑草でさえも、弱いものから徐々に姿を消していった。 しばらくはダムや貯水地のお陰で何とか不備なく生活していた人々だったが、一ヶ月も経つと、援助なしでは自立することが難しくなった自治体が次々と現れた。 政府は海外からの救援物資を要請したが、何しろ政府自体が濁流にさらわれたのだ。海外との通信も上手くいかない状況だった。 それでも、水害と干害を聞きつけた沢山の国々が応援へ駆けつけてくれたお陰で、最悪の事態は免れている。 山地の広がる地帯は奇跡的に無事だったが、山下に広がる平地──ことに標高の低い土地では、どんな地獄絵だっただろうか。 しかし、平地に行ったからといってそのような光景を目の当たりにする訳ではない。 街にはもう、建物も無ければ動物もいない。ただ乾いて陽光に焦げる道路だけが、かろうじて人の営みを感じさせるだけだ。 他にはなにも無い。
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