雨止んで、また、嵐

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確かに人間は雷を恐れているわ。だから落とすのよ。 時雨は首を傾げた。ふふっ、と女性が笑う。黒雲を背景にしても引き立つ笑顔だ。 今から強い雨を降らしますよ、っていう合図なのよ。 意図はよく分からなかったが、母の言っていることは正しいように感じた。 ……………? 私……今なんて……… 二度目の閃光が飛び散った時、あの雲のような温かさは消えていた。 「時雨」 自分を呼ぶ声がする。さっきの声色よりもトーンが低く、少し重みのある声。 「本当にまだ……あるのか?」 「何がですか?」 「いや、だからオトシモノ」 ああそういえば、私がそんな事を言ったんだ。 「あります。さっき分かりました。というか、最初の時点で長旅になるって言ったじゃないですか」 行宏はあいにくばつの悪そうな顔をした。
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