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「そ、そりゃあもう行宏さん無しには!」
「後から付け足さなくていい」
確かにそう言われても仕方ないかもしれない。まるで自分の偉業のように流暢に語っていたのだ。自分が行宏の立場でも、少しムッとするだろう。
そんな思いとは裏腹に──言葉は刃を突き立てる。
「そんな……でも行宏さんだって、私の導きが無かったらここまで来れてないじゃないですか。自分だけのお陰みたいに言わないで下さい」
あ………
「ああそうだなー。じゃあ俺はもう行かなくてもいいかもな。お前一人で大丈夫そうだし」
いや、そんな、うそ……
リセットボタンは手元に見あたらない。
さっきの行宏の言葉は雷だった。これから訪れる大雨に気をつけろ、と、警報に他無かったのだ。
雨宿りするどころか嵐を呼んでしまった。いつ去るか分からないような嵐を。
「いや…でも」
「じゃっ、いい経験になった。ありがとう」
「えっ……でも…………まあ私一人でも大丈夫かもしれません。無理して来なくてもいいですよ」
来なくてもいいは逆接だ。
本当に言いたい事とは違う……というのは甘えだろうか。
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