雨止んで、また、嵐

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       * 自分にしては珍しく相当な早足で山を駆け下りた。 時雨に言葉を浴びせつけてからここまで、無心で歩いてきた。久し振りに感じた感情の起伏。内側から湧き上がるマグマが、熱く心臓を脈打たせる。 それからもしばらく歩き続けた。疲労を全く感じない。このままどこまでも歩いてしまいそうだ。 しかしそうは行かなかった。 見覚えのある洞窟に差し掛かった時、これまた見覚えのある白髪の男を見かけた。 「ん?お前さんどこかで……こんなところに何しに来たんじゃ?ここはお前さんのような若いもんが欲しそうなもんは無いぞ?」 本当に忘れたのか、単に冗談を言っているのか。ポテ爺の場合、おそらく前者だろう。 「ポテ爺……まだここにいたんだな」 「ぽてじい?わしに名前なんぞ……あゎあー!!昨日の兄ちゃんか!?」 ポテ爺は叫びながらのけぞって倒れる。行宏が突然目の前に瞬間移動してきたかのように大袈裟な反応だ。 「な、な、もう用事は済んだんかぁ!?」 「ああ、オトシモノの事か?見つかったからここにいるんじゃねーか」 「おお、そうかそうか……それにしても山に落し物するなんぞ、けったいな話じゃのう」 そうか、ポテ爺にはオトシモノの事を詳しく話していないのか。いずれにせよ、行宏さえオトシモノが一体何だったのか完全に理解はしていない。 「そういや……一緒におった嬢ちゃんはどこにおるんじゃ?」
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