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自分にしては珍しく相当な早足で山を駆け下りた。
時雨に言葉を浴びせつけてからここまで、無心で歩いてきた。久し振りに感じた感情の起伏。内側から湧き上がるマグマが、熱く心臓を脈打たせる。
それからもしばらく歩き続けた。疲労を全く感じない。このままどこまでも歩いてしまいそうだ。
しかしそうは行かなかった。
見覚えのある洞窟に差し掛かった時、これまた見覚えのある白髪の男を見かけた。
「ん?お前さんどこかで……こんなところに何しに来たんじゃ?ここはお前さんのような若いもんが欲しそうなもんは無いぞ?」
本当に忘れたのか、単に冗談を言っているのか。ポテ爺の場合、おそらく前者だろう。
「ポテ爺……まだここにいたんだな」
「ぽてじい?わしに名前なんぞ……あゎあー!!昨日の兄ちゃんか!?」
ポテ爺は叫びながらのけぞって倒れる。行宏が突然目の前に瞬間移動してきたかのように大袈裟な反応だ。
「な、な、もう用事は済んだんかぁ!?」
「ああ、オトシモノの事か?見つかったからここにいるんじゃねーか」
「おお、そうかそうか……それにしても山に落し物するなんぞ、けったいな話じゃのう」
そうか、ポテ爺にはオトシモノの事を詳しく話していないのか。いずれにせよ、行宏さえオトシモノが一体何だったのか完全に理解はしていない。
「そういや……一緒におった嬢ちゃんはどこにおるんじゃ?」
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