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「うーん、これは……『ぬ』!」
「惜しい! これは『め』だ」
「むー、ユーややこしい」
今は俺の部屋で約束どうりユーに文字を教えている。
一生懸命文字を覚えようとしている姿は、俺から見てもやっぱり普通の子にしか見えない。
「こっちが『め』で、こっちが『ぬ』で、こっちが……あれ?」
「なぁユー」
「? どうしたのパパ?」
「ユーは自分が何か分かるか?」
「ユーはユーだよ?」
あぁ、これは俺の質問が悪かったな。でも何て聞けばいいかな。小難しい話は分かんないだろうし……
「そうだな……、ユーは自分が人間だと思うか?」
俺からすれば明らかに違う。でもユーがどう思ってるかで自分に対する認識が分かる。
「違うの?」
……そんな純粋な瞳で不安そうにしないでほしい。自分が悪いことを聞いた気分になる。
「いや、違わないよ。さっきのは忘れてくれ」
「? 変なパパ」
笑いながらそう言うと、ユーはまた字の勉強に戻った。
まぁ、さっきの反応からして自分のことはほとんど知らないんだろう。だったら前がどうとか関係ない、今はただの純粋な女の子だ。そういう風に接しよう。
その日はユーの字の勉強に付き合って終わった。なかなか新鮮な気持ちで楽しかったな。
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