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……心臓がドクドクと早鐘を打っているのが分かる。
「……どうしたの、白石さん? こんなところで」
もはや分かり切っているというのに、まだただの勘違いの可能性を捨てられない。
さすがに異様な雰囲気を感じ取ったのか、ユーが不安そうに俺の手を握りしめ、後ろに隠れる。
「ふふ、この期に及んでまだそんなとぼけた事を言うんですね」
否定の言葉では無い、むしろ状況を確定させる言葉だ。
走って逃げれるだろうか? いや、ユーがいてはそれも叶わない。
そんなことを考えていると、白石さんの側の小道からもう一つ人影が現れた。
「いっやー、ここまですぐに外出してくれるとはありがたいねー。 ホント、すぐに片付きそうで助かるよ」
女、だろうか。 中々の長身で恐らく茶色の髪をポニーテールにしている。
スーツを着ているが、その両手には大型の手甲を着けており、その左手は緑色に薄く輝いている。
少なくとも日常的に見かけるような格好では無いだろう。
「でも『銀色』ってのはめんどくさいよねー、超便利な『緑色』の特性が丸々打ち消されちゃうんだから。 ま、その分希少なんだけど」
その女は延々と一人でよく分からないことを呟いている。
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