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痛みが引くまで待ってくれるはずもなく、ニ発目、三発目と打ち込まれる。
痛みの中で必死に思考を巡らせる。 両腕は使えない、繭の特性はこの状況で役に立つ類のものではない、『治癒』でもそれを上回る速度で体は壊されていく、今さら話は出来ないだろう。
この状況でとれる手段を思い付くこともなく、意識は段々と朦朧としていく。
消えゆく意識の中で、走馬灯のように今までの記憶が流れてきた。
かつて交わした約束、生涯をかけて叶えると誓った願いを思い出す。
――死ねない、まだここじゃない
そう思うはずなのに、体は一向に動かない。
打ち込まれる拳が止む気配もない。
(あぁ……、ホント、……冗談じゃない)
約束を果たせない後悔を胸に、私は意識を手放した。
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