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――――ハァッ、――――ハァッ
荒い息が聞こえる。 どうしたのだろうか、その音からは疲れだけでなく焦りが感じられる。
―――グスッ―――ヒック――
これは、ユーの泣き声か? 俺はユーを泣かせてしまったのだろうか、だとしたら早く謝らないと。
――ピチャッ―――ピチャッ――
水の滴る音、随分と近くから聞こえる。 雨が降っているわけではないのに。
そこで俺はやっと気がついた。
この息は俺が発しているものであり、この水の音は俺の手から滴り落ちる血の音なのだと。
× × × × ×
「何だよ……これ」
意識を取り戻した俺が見たのは信じられない光景だった。
目の前には先程俺を襲ってきた女が見るも無惨な姿で倒れており、生きているかどうかすら分からない。
対する俺はあれだけ殴られた記憶があるにもかかわらず傷一つなく、その手からはあの女のものと思われる血がべったりとこびりついている。
幸いユーにも怪我は無いようだが、道路に座り込んで泣いていた。
状況だけ見れば俺がやったに間違いない、どこからどうみても有罪だ。
しかし記憶の中のあの女の力、どう考えても俺があれに勝てるとは思えない。
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