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「ユー、何があったか分かるか?」
本当は頭を撫でてやりたいが、この血塗れの手ではそれも叶わない。
「……グスッ…、あのお人は……ウゥ……、悪いお人だから…ヒッグ……」
目を真っ赤に泣き腫らしてそう言う。
まさかユーがこれをやったというのか? いやそんなはずは無い、ユーの体は全く血に汚れていない…………不自然なほどに。
先の女の言葉を思い出す。
――それはただの化け物だよ――
頭を振りその言葉を打ち消す。
そんなはずは無い。 それに、仮にそうであったとしても――
「―――ヒュー――ヒュー」
背後から弱々しい呼吸が聞こえた。
まだギリギリ息があるらしい、しかしまさに虫の息だ。 放っておけばすぐに死んでしまうだろう。
……少しの間、逡巡する。 こいつは本気で俺達を殺そうとした、ユーも捕まっていればどうなっていたか分からない。
だが――
「あぁ、どうすればいい、――この左手のは駄目だな壊れてる、取り外さなきゃ。
右手のはどうだ、ヒビは少し入っているがまだ使えるか」
この状況を俺が作ったにせよ、そうでないにせよ、人殺しになるわけにはいかない。
こいつを助けるのは、あくまで俺達のためだ。
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