5.意味を知る少年

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あの時の動揺を思いだして顔が熱くなる。 「お、お前なぁ……」 【あの時のポカーンとした顔……ぷぷっ、あ、あの伸びた鼻の下…くふっ……、いや本当に凛々しくて…ぷふふふ】 あぁおかしいとは思っていたさ、会ったその日に告白なんて。 近づければ何でも良かったのだろう、だが仕方ないじゃないか嬉しかったのだから。 【い、今なら本当に恋に落ちそうですよ……ぷっ、もうダメおなかいたい、どうしようもないです…ふふふふっ】 粒子となっているくせにそんなことを言う。 もういい、相手をしていても心が傷つくだけだ。 俺がからかわれている間に女の治療は殆ど終わったようだった。 変な方向に曲がっていた腕も元に戻っている。 「目は覚まさないのか」 【そうですね、この具合だとえーと……目を覚ますのは明日の昼頃でしょうか。 まぁ今目を覚まされても困るでしょう?】 確かにその通りだ、今起きられては話を聞けるはずも無い。 それじゃあ一度、家に帰るか……。 体の傷は治療出来ても服の血の跡はどうしようもない、俺も女も血塗れだ。 このまま帰ってはパニックになりそうだが……。
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