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【それならば問題無いと思いますよ? まだ『緑色』の特性『認識阻害』は生きています。どうとでも出来るかと】
『認識阻害』? この壊れた手甲にはそんな効果があったというのか。
あぁ、このおかしな町の様子はこいつのせいなのだろう。
【ええ、その通りです。 本来なら半径一㎞圏内は好きなように阻害出来ますが……、その様子では二十m圏内が関の山でしょう。
じきに阻害の効果も切れ始めます。早く帰ることをおすすめしますよ?】
なるほど、確かに随分と便利な能力のようだ。
とりあえず左手に壊れた手甲を持ち、女を担ぎ上げる。 手甲の効果か、簡単に持ち上げられた。
まだ泣いているユーのところへ近づいていき、声をかける。
「さぁ、ユー……帰ろうか」
手を差し出そうとするが、血塗れの事実を思いだし引っ込める。
「………ヒッグ…」
しかしユーはその手を掴みとった。 血に汚れることも気にせず、しっかりと、離さないように。
「パパ、一緒に帰ろう」
その小さな手を握り、俺は改めて決めた。 この手を決して離さないようにしようと。
「あぁ、一緒に帰ろう」
こうして、初の散歩は散々な結果に終わったのだった。
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