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そして、その後桜井さんを探した。
順番なんて何も気にしていなかったけれど、
なかなか桜井さんが見当たらなくて最後になってしまった。
……それもそのはず、
私が桜井さんを見つけたときには、
彼は両手いっぱいに花束をいくつも抱えていた。
「……あ、鈴ちゃん」
「すごい……花束ですね」
今の今まで気付かなかった。
桜井さんは後輩に人気があったのだ。
「私……手ぶらですみません。あの、ずっと……お疲れさまでした。元気で……頑張ってください」
「ありがとう。鈴ちゃんも元気でな」
「……はい」
髪の毛をなびかせる雪交じりの風が私の身を縮めた。
すると、桜井さんが花束を地面に置いて、自分のマフラーを外した。
そして、私に近付くと、
私の首にゆったりと巻きつけた。
「……もらって。鈴ちゃんの中に……俺は何も残せなかったから」
向けられた眼差しが痛かった。
優しくって
切なくて
桜井さんは
今にも泣きそうな目をしてた。
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