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「おいおい、泣くなよ」
泣けない方がおかしいよ。
「……、出よう」
健太の言葉に頷いて私達はファミレスを後にしたんだ。
「少し走るか?」
健太はそう言うと車のエンジンを掛けて、車を走らせた。
私は鼻を啜りがら頷いて、足元を見ていた。
……、上手く言えなかったからかな?
普段の私の性格とは打って変わって、この日は不思議なくらいに往生際の悪い私になっていた。
……、ちゃんと伝わらなかったのかも。
「……、健太?」
「うん?」
「ちゃんと伝わってない?」
「……、伝わってるよ」
「……、そっか」
また、涙が遠慮を忘れ始めた。
「……、和紗?」
「……、ん?」
私は鼻声で返事をした。
「……、ほら此処、覚えてる?」
いつの間にか健太は車を止めていて、フロントガラス越しに指を差した。
健太の指差す方向には桜の枝が風に揺れていた。
「……、うん」
「……、和紗と初めて歩いた桜並木」
「……、うん」
「……、時間くれないか?」
「えっ?」
私は顔を上げて健太の横顔を見ていた。
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