プロローグ

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  みんな、消えてしまった。 世界からも、俺の中からも。 生きたい連中も死にたい連中も、例外なく無関係に。 みんな、消えてしまった。 痕跡すら残さず、綺麗さっぱりと。 ただ、誰かが居たのだと。 これまで消えていった人間達の一人になる。 立つ鳥は後を濁さない。 神による存在否定。 参照されるデータごと、誰かが消滅する。 「俺もいつかそうなるんだろうと思ってたけど、現実になってみると──」 起床したばかりの俺の掌には新しい雪みたいに透き通った真白をしたヒトヒラの神秘の羽根──ではなく、神様が寄越した二つ折りになった簡素な手紙。 寝ぼけ眼で開いて中身を確認。 「やっぱり堪えるもんだな」 貴方は30日の猶予期間の後、この世界から消滅しますよ。 その予告が俺に届いた。 今日も世界では忙しなく誰かが消滅している。 明日も明後日も誰かが消えて。 30日後は俺の番。  
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