プロローグ

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 そう「人類」…「類」であれば良いのです。  ナノタブによる医療技術の進歩により、現在では少なくなりましたが、昔は心臓に不具合を抱える方が、心臓ペースメーカーという器具を入れたり、もっと極端な例を言えば、視力の低下した方がメガネやコンタクト…といった生身の体には存在しない器具の補助により、通常の生活を送る…ということが多くありました。  義手や義足、義眼の方も。補聴器やメガネだけでなく、人工の臓器が必要な方も。また、様々な理由により、薬を常に服用せざるを得ない方も。  その方々は、間違いなく人間です。これは、もう主義主張の問題にもなりますが…少なくとも私は、多少の肉体的特徴や組成の違いで、区別する理由はないと信じます。  しかし、器具や薬のような手段は、今も昔も肉体や精神への負担が大きく…決して「不老」への最短ルートにはなり得ないのです。  そこで、我々は、ナノタブに代表されるようなナノテク(ナノ・テクノロジー)による体や精神に負担の少ない方法を考えました。  赤血球や白血球、血小板など…これらは…ある意味、天然のナノマシーンであると言えます。我々は既に、水素や酸素…窒素…つまり空気や水ですね…と炭素や硫黄を人口的に合成し、それを段階的に繰り返し…生命の元となるタンパク質を合成し、赤血球たちと同じく金属ではなくタンパク質を材料としたナノマシーンを生み出すことに成功しています。  ナノタブとは、この有機的なナノマシーンを、人体に取り込みやすいように錠剤(タブレット)の形状にしたものであることは、周知のことと思います。 ・・・
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