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さて。
話を元に戻しましょう。
先ほどの遺伝子治療の効果ですが…「不老因子」などという大げさなネーミングをつけたわりには、残念ながら「長寿」に「毛」が生えた程度しかありませんでした。
その治療を受けた群と、受けていない群での平均寿命の比較は、「不老」という事象の性質上、それほどの長期にわたるデータがまだ録れていません。
ですが、最初の被験者たちは確かに「老衰」の呪縛からは逃れることに成功しました。
ついに人類は「不老」を手にするコトができた!………かと、我々研究者は大いに喜んだのですが………それはご想像のとおり…ぬか喜びでした。
この講義の冒頭で述べたとおり、2206年時点で、人類はいまだ「不死」も「不老」も手に入れることはできていないのです。
そして、その理由は「人類が未だ人類のままだから」。
何やら、私の話は矛盾しているように聞こえるでしょうか?
遺伝子治療により「不老」を実現した…と言いながら、「不老」は手にしていない。
矛盾していますよね。申し訳ありません。
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