プロローグ

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 この矛盾を解明するために、「不老因子」の働きについて、まず説明をしましょう。  「不老因子」は、遺伝子が新陳代謝…つまり細胞分裂を繰り返す度に自然に混入するエラー…つまり遺伝子の傷が発生しないようにコントロールするとともに、発生した遺伝子のエラーについても可能な限り修復します。  また、DNAの端にはテロメアと名付けられた細胞分裂の可能回数をカウントする役目をする部分がありますが、「不老因子」はこのテロメアのカウンターもリセットし、細胞分裂の限界が訪れないようにコントロールをします。  このように、「不老因子」は「老化」の原因について一つひとつ対応し、若い体を維持しようとするものです。  しかし。  「老化」とは、そんな単純なものでは無かったのです。  「不老」を阻む人類の敵。それは「癌」です。20世紀から21世紀にかけての研究者も、「癌」が「老化」と同列に語られるものであることを知っていました。  しかし、細胞分裂が限界を迎えていく…という意味での「老化」と、逆に細胞が無限に分裂を繰り返してしまう「癌」では、その対処方法が大きくことなります。しかも、困ったことに「癌」の細胞は死にません。正常な細胞の陣地を侵し、正常の細胞よりも多くのエネルギーを浪費し、そして無限に増殖する。 ・・・
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