プロローグ

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 しかし、人類の暮らしを快適にするために生み出された様々な化学物質、これらの中に、後になって「環境ホルモン」であることが判明したものが多数存在します。  尊い犠牲があってのことですが…毒性の高いものについては、法律等で生産や使用、廃棄やその後の管理が制限され、極端な「環境ホルモン」による被害は減ってはいきました。  しかし、環境ホルモンの多くは、自然界にある物質よりも安定性が高く、一度拡散してしまったそれらは、この23世紀の現在でも我々の脅威として存在し続けています。  しかも…22世紀や23世紀になってから、それまで安全だと信じられていた物質が、実は「環境ホルモン」として人類の体に影響を与えていると判明したものも少なくありません。  「環境ホルモン」のタチの悪いところは、それが人類にとって必要な「ホルモン」の作用を阻害するものだけでなく、人類にとって必要な「ホルモン」と類似した構造を持つものは、ホルモンの受容体に「偽のホルモン」として結合してしまい…必要がない、又は、必要以上の内分泌物質の生成や過剰反応を引き起こしてしまうというところです。  この過剰反応が…「癌化」を誘発します。  人類が、その体の仕組み上、「ホルモン」を必要とする以上…「環境ホルモン」の影響から完全に逃れることはできません。本来必要な「ホルモン」すら受容できなくなれば、正常な状態を維持できなくなってしまうからです。 ・・・
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