プロローグ

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プロローグ

(1) ナノテク論的人類進化学 概論 ・・・  古来、王侯貴族など時の世の支配階級は、自らの権勢を極めるとともに、長寿を望み、不老を願い…そして不死を祈ってきた。  しかし…究極の治療薬といわれる「ナノタブ」が存在し、必要とされていることからも分かるとおり、23世紀を迎えても、人類自体は【死】はおろか【病】からも自由になってはいなかった。  これは何故か?  科学技術は、19世紀後半から20世紀に加速的な発展を始め、21世紀から22世紀にかけては飛躍的に進歩した。その結果、生活環境は改善し、QOL(人生の質)も向上した。人的ミスによる事故も皆無となり、不治の病と呼ばれるものも…その多くは予防や治癒の方法が研究し尽くされ、脅威とはならなくなっていた。  それは間違いない。  にもかかわらず、人類の「不老不死」の夢に科学技術は何ら貢献をしなかったのだろうか?…長寿すら叶わなかったのだろうか?  記録上の最高齢には、自称や伝説も含めれば200歳以上生きた者もいるようだが、人類全体の寿命の話をしているのだから、ここでは平均寿命で語るべきでだろう。勿体ぶるまでもなく、世界中の平均寿命は21世紀の前半で頭打ちになり、20世紀後半から問題になっていた高齢化社会が、インフレーションを起こすことはついに無かった。 ・・・
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