みかん箱

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吐いた息が白く凍る、2月の半ば。 寒がりなおれは、冬は完全なインドア派だ。 しかし、今近所の神社に妹の美羽と来ている。インナーやらアウターやら、モコモコに着こんで。 こんなことを言っては罰当たりだが、ご利益があるのかと疑ってしまうほど、小さくて草臥れた神社。誰も手入れをしていないのだろう。 もともと信仰心の薄いおれは、義務的に賽銭を投げ入れると、義務的に手を合わせた。 その間、ものの数秒。 義務を果たしたおれの横では、小さな妹が背中を丸めさらに小さくなって、熱心に願い事をしている。 心の中で唱えているつもりだったのだろう。しかし、無意識に口に出てしまっていた。 「彼氏がほしい…彼氏がほしい…彼氏がほしい…。」 おれは、思いっきり美羽の後ろ頭を叩いた。
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