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その震える手で、私はドミノの板を掴むと、それを指定された場所へと置いた。置く一瞬、手の震えが一段と激しさを増したような気がした。もちろん、気のせいである。小さな震えの変化を一々、気にしていたきりがない。
私は手持ちのドミノを並べ終えると改めて周囲を見渡した。周囲では、私と同じように手持ちのドミノを倒さぬよう丁寧に並べている人達がいる。所々だけを覗き見れば、ドミノの世界記録に挑戦している集団のように見えるはずだ。しかし、実際はそうではない。それは、木を見て森を見ぬと同じことだ。
私の周りに並べられたドミノ。それは縦横無尽に張り巡らされており、端が見えなくなるまで並んでいた。何も知らぬ者が見れば、このイカレた光景に少なからず驚くことだろう。私も実際、この光景を目の当たりにした時、気でも狂ったかと思った。世界記録など優に超えているドミノの列。
ここは、ドミノ地獄。そう呼ばれるに相応しい場所なのだ。
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