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「なんて奴だ。私達の協調がとれたドミノを」
「こいつが、テロリストという奴か」
同じドミノを並べる作業をしていた作業員達が白い目で、島根を見つめ口々に言っている。島根は震え上がりながら、
「ち、違う!わざとじゃない!そ、その手が手がふ、震えて・・・!」
何とか言い訳をしようとしているが、そんなのが通じないことを島根は知っているはずだ。
「俺達の」
「私達の」
ドミノが倒れるキッカケをつくってしまった島根にジリジリと作業員が迫ってきた。島根は私の方を向いて、助けて求めてきた。
「な、なあ。俺はわざとじゃないんだ。し、信じてくれよ」
島根は必死になって、弁明を私に求めていた。しかし、私は作業員達と同じように白い目で彼を見て、
「自業自得だろ」
私は小さな声で言った。昨晩、あれだけ注意を促したというのに酒を飲むのをやめなかった島根。それが、原因でドミノ並べの失敗など言い訳にならない。
何より、島根はドミノに対する愚痴も呟いていた。
「そう言えば、こいつ、昨日の夜、酒を飲みながらドミノを批判していたな」
「何だと!すると、やっぱり、これは・・・」
「ち、ちが・・・!」
震える島根。そして、次の瞬間、彼の中で、何かが弾けた。
「う、うああぁぁぁ!」
狂ったように島根は逃げ出した。同時に、彼を追いかけるように作業員達も走り出した。もはや、島根はただの犯罪者でしかない。大勢の人が時間と努力を重ね並べたドミノを倒したという行為。それは、長い時間と人類の英知をかけて築き上げてきた社会を壊すのと同等の罪なのだ。
おそらく、島根は逃げ切れないだろう。社会を敵に回してしまったのだから。
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