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メアリーはそう言うと視線をアリスに戻し、
「そう言う訳ですわ、お姉様。
早く帰りましょう」
袖を引っ張って急かす様に促す。
「あっちょっ待てよメアリー。
ここには転送施設なんてないのよ?
帰るって言ってもどうやって帰るのよ」
アリスは困惑した表情で抵抗しつつメアリーに尋ねる。
「それなら心配要りませんわ。
これがありますもの」
メアリーはそう言うと袖を掴んでいた手を離し、自分の袖を捲って腕を見せる。
そこには鈍い光沢を放ち、なにやら難解な文字が刻まれた鉛色の腕輪が付けてあった。
「なんだそれ」
信夫はメアリーの腕輪を興味深げに見ながらそう尋ねる。
「これは次元転送用の魔導具ですわ。
まぁ流石に次元転送にもなると負荷が大きすぎて一回で壊れてしまうのですけど、前私がこっちの世界に来た時にもこれを使って帰ったんですのよ?」
(負荷が大きすぎるって・・・
俺三人も同時に送り返したんだけどな)
「へぇ~そうなんだ」
信夫は自分がしたことの大きさに驚きながらそう答える。
「それで――」
メアリーはそこで言葉を切ると、捲っていた袖を戻してポケットをまさぐる。
「これこれがお姉様の分ですわ」
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