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「ん~…………!」
「もう少しだ! 頑張れ!」
今おれの目の前にいる少女は蝋燭に火をつけようと四苦八苦している。
勿論、魔法でだ。
「はっ!」
掛け声とともに、蝋燭の先端が燃え始めた。
思ったよりも早くできたため、たったそれだけのことに本当に驚いてしまった。
「お兄ちゃん!できたよ!」
そう言って抱きついてくる妹。
「よくできたな、偉いぞ」
えへへ、と言って笑う顔を見ているとこっちも口元が緩むのは必至である。
火のついた蝋燭を、真っ黒な人型が持ち上げてどこかへ消えた。
それを見届けてから、赤いソファに向かい合うように座る。
おれは分厚い本を手元に開き、妹は羽ペンと数枚の紙を取り出した。
ーーここは魔界と呼ばれる辺境の地。
ここから遥か西にある人間界にあるような植物は無く、殆どが岩や砂の大地で形作られた大陸だ。
空は大抵厚い雲に覆われていて、陽が射すことはここ数千年確認されていない。
そんな劣悪な環境には理由がある。
この大陸のあちこちにある"魔製岩(マセイガン)"だ。
この世界の大気に含まれる"魔素"という魔力の源となる物質を、不規則に噴出する大小様々な鉱物を指す。
魔素はこの世界の魔法を使う上で必要不可欠な物だが、濃度が濃すぎると猛毒となる。このことは他の気体にも当てはまることだが、魔界は魔製岩のあるせいで大気の5%を魔素が占めている。
「ここまではいいか?」
「はい!」
いい返事だ。
補足だが、おれは今妹の先生役だ。
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