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結局彼女は一人で傘に入り、俺は雨に打たれて駅まで行く。
「昔もさ、あったよね。こんなことがさ」
彼女がぽつりと呟いた。
「学校に行く途中やっぱり突然雨が降ってきてさ。あなたは私のことを傘に入れてくれるの。でもね、その傘小さいから、私が入ったせいであなたは左半分がずぶ濡れなの……」
「それのどこが……」
よく見ると、彼女は俺にほんの少しだけ傘を傾けていた。
そして彼女の左半分は、やっぱりずぶ濡れだった。
彼女は優しく俺に微笑みかける。
でも、俺は何もしてやることができない。
俺に残された道は、先に進むこと。
それだけなんだ。
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