プロローグ

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ヴォルペ 「抵抗は無意味──おまえの意思など<マニック・デプレッション>で制御できる肉体反応の前には無力だ」 ナレーター 「そう言って男は、少女の喉を鷲掴みにした。その指先が皮膚に、肉に食い込んでいく。絶叫が、底無しの闇に覆われている夜に響き渡っていく──」 ナレーター 「これは、一歩を踏み出すことが出来ない者たちの物語である。将来に何の展望もなく、想い出に安らぎもない。過去にも未来にも行けず、現在に宙ぶらりんにされている者たちが足掻いている──その事についての奇譚である」 ナレーター 「彼らが足掻くのは、一歩目を何らかの形で踏み出したいと思うからなのか、前進するのか、後退するのか、それは誰にもわからない。本人たちにはもちろん、彼らをそのような運命に落とした世界の方も、何もわかってはいない」 ナレーター 「はっきりしていることはただ一つ、彼らの立っている足場の方はどんどん崩壊していっており、もはや同じ場所には留まれないと言うことだけだ。明日はなく、故郷もない。その中で人はどこに希望を見出すのか、あるいは何を絶望として怒りをぶつけるのか──そのことを一人の少年にたくして、追求していくことにしよう」 ナレーター 「少年の名はパンナコッタ・フーゴ。人から裏切り者と蔑まれ、恥知らずと罵られる彼がいかなる運命にたどり着くことになるのか、それは彼の選択次第である」
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