6人が本棚に入れています
本棚に追加
ナレーター
「その通信を受けた男は、他には誰もいないスタジアムの客席に姿を見せて、上空に向かって手を振って見せた。ちかちかっ、とライトが点滅して、彼の姿を確認したことを知らせてくる」
ミスタ
「それじゃあ、あんたたちは観察を続けてくれ。わかっていると思うが、オレに何かあったらすぐにトンズラしろよ」
搭乗員
「了解しました。お気をつけて、グイード・ミスタ」
ナレーター
「通信を切ると、その男──ミスタはブーツに手を伸ばして、そこに差し込まれていた拳銃を取り出して、慣れた手つきで構えると、スタジアムの向かい側にある選手入場口に向かって声を張り上げた」
ミスタ
「よし、いいぞ──出てこい、シーラE」
ナレーター
「十秒ほど静寂が続いた後で、いつもならば試合に臨む者たちが精神を集中させながら現れるところから、ふたつの人影があった頼りなげにゆっくりと歩み出てきた。ひとりはシーラEと呼ばれた少女だ。そしてもうひとり、シーラEに押されるようにしながら肩を落とした少年が、ためらいがちに足を動かしていく」
ミスタ
「そこまで、だ──」
ナレーター
「シーラEと少年は、ミスタの前方、二十メートルまで近づいたところでそう命じられ止まった。シーラEは素早く反応するが、少年は、びくっ、と痙攣したような動きを見せた」
最初のコメントを投稿しよう!