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ナレーター
「ミスタの拳銃が、彼の方に向いていた。その銃口が顔面の中心を──眉間と唇の間、鼻筋のやや上に、ぴたりと狙いをつけられていた。ふん、とミスタが軽く鼻をならした。少年を見下ろしつつ、唇をつき出すようにしながら言う」
ミスタ
「久しぶりだな、おい」
ナレーター
「呼び掛けられて、少年はぎくしゃくとした動作で顔をあげた。少年を見つめるミスタの目は、氷のように冷たかった」
ミスタ
「なあフーゴよ、おまえ、今までどうしてたんだ?」
フーゴ
「…」
ミスタ
「こちらの調査じゃ、おまえはここ半年ほど、バーでピアノを弾いていたってことだが…なんだな、おまえ、ピアノなんか弾けたんだな。知らなかったよ。結構長い付き合いだったのに」
フーゴ
「…」
ミスタ
「さすがに育ちのいいお坊ちゃんは違うな。色々とお上品な趣味をお持ちだな、えぇ?」
フーゴ
「…い」
ミスタ
「あ?なんだって?おめー今、何か言ったな──おい、言いたいことがあるなら、はっきり言えよ」
ナレーター
「フーゴが口の中で何かを呟いたのを、ミスタはすかさず聞き返す」
フーゴ
「…別に、何でもない」
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