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海崎屋は商人や荷を運んできた人やらで賑わっていた。
そんな中、一人の商人となにやら話していた男がふと顔を上げて浅葱たちの存在に気がつく。そして、満面の笑顔になると二人に近づいてきた。
「おっ、松屋さんのとこのお空ちゃんじゃないか!」
「こんにちは、海崎屋さん。」
彼は海崎屋の店主の栄一郎。かなりやり手で、海崎屋を今の規模にしたのは彼の手腕だ。
今の規模というのは、船頭を二重ほど抱え、境からだけでなく出島や琉球、さらに琵琶湖を経由して越後などからも品を輸出入している。
廻船問屋としては中規模だが、手がけている規模は江戸や境の大店にも負けてはいない。
「今日はまた美男美女が来たねぇ。砂糖だろう?入ってるよ、見ていくかぃ?」
「えぇ。浅葱、ちゃんと見てきてね。」
「はい。」
浅葱はスッと表情を引き締めると栄一郎の後に続く。
浅葱は一応松屋では「手代」という立場である。
主である一太郎から松屋に来た当初から様々な知識を詰め込まれていて、砂糖の善し悪しの見分けも半泣きになりながら仕込まれたのだ。
「これは琉球からの黒糖、こっちは蝦夷からの白糖で…。」
浅葱は次々に出される砂糖を見ながら、時折においをかいだりしながら見定めていく。
<砂糖なんて全部一緒だろ~?>
白夜は浅葱にしか聞こえないように音量をしぼってそう言うと鼻を鳴らした。
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