再会は悲鳴と供に

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「お嬢様…桜の海ですね…。」 「あ、浅葱…ケホッ…歩くのが早い。」 浅葱はつい夢中になり、お空の手を引いて歩いていたが、仁和寺の桜の木々を見て足を止めた。 半ば引きずられかけていたお空はケホケホと噎せて、呼吸を正している。 <浅葱、浅葱。> 「なんだ?」 折角濃淡が様々な何十本もの桜に感動していたのに、白夜に声をかけられて浅葱はムッとしたように言う。 <お空に少しは気を使ってやったらどうだ?優男が台無しだぜ?> バカにしたような白夜の言葉。しかし、浅葱はサッと振り返り、未だに噎せているお空をみる。そして、自然と自分が繋いでいる手も目にはいる。 「………すみません?お嬢様?」 そして、次にした行動は全力でお空に頭を下げることだった。 浅葱の顔は真っ赤になり、まさに茹で蛸と言うにふさわしい。 一日に何回もなんとも顔色が忙しい日だ。 <ケケケ~。> 白夜はその声を聞きながら大爆笑していた。
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