再会は悲鳴と供に

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<いやぁぁぁあああ!!!> <ケケケケ…> 「き、狐火だぁぁ!!!」 「火消をよべ!!」 「こ、これは…」 騒ぎの中心は、一本の桜。 桜が…燃えている。 物見遊山と決め込んでいた者たちは、慌てて燃えている桜から離れようとしている。 見える浅葱はその人ごみの中に桜の木の根元で狂ったように叫び、助けを求めて空に手を伸ばす桜の精霊と、それをあざ笑うかのように桜の周りを飛び交う色とりどりの火の玉を見ることができた。 「どう?浅葱…私の用意した余興は?」 目の前に広がる光景に絶句する浅葱の背後から聞こえる楽しげな声。 「貴女は…なんということを…。妖にも命がある、気持ちがあると教えてくれた貴女が…何故??」 浅葱の叫びは、喧騒の中にあっという間に飲まれて消える。 しかし、届けたい人間には届いたらしく、聞いている側が鳥肌が立ちそうな不快な笑い声をあげて彼女は言う。 「あなたが名前を変えたように、私も変わるのよ、ハナダ。…陰陽寮に、お上に、人間に、妖怪に復讐するために私は変わったの。…私の本気、わかってくれたかしら?」 その間にも桜は花弁を美しい桜色から真っ黒に変えていく。桜の精霊の悲痛な叫びも弱々しくなっていく。 「貴女は…そんなものを見せつけるために…彼女を燃やしたのですか?」 「そうよ。」 <だとしたら、少々お時間をいただけませんか?貴女のようなまだ若い人間が邪火を操れるのには裏がありそうですから。> 二人の会話に割って入ったのは、若い男の声。 それと同時に、カラリと晴れていた空から、滝のような雨が燃える桜に降り注ぐ。狐の嫁入りと言うには奇怪すぎる現象にまた違った意味の騒ぎが起こる。 「あら、お邪魔が入ったわね。じゃあ、浅葱。また後日。あなたの奉公先にお邪魔させていただくわ。」 「蘇芳姉さん、もし私の大切な方々に手を出して見なさい、容赦はしませんから。」 フフっと彼女、蘇芳が笑う声がすると、異様な威圧感が消えた。 <浅葱くん、お久しぶりですね。色々と、聞きたいことがありますが、彼女を手当てしなくてはいけません。今夜、羽衣狐の社に来れますか?> そう言ったのは、いつの間にか浅葱の横に立っていた、深い緑色の髪に青い目、同じく青い着物を着た青年。 「えぇ、河伯。…いつか羽衣狐様以外のみなさんにも話さなければと思っていたところです。」 浅葱は答えた。
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