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「お空??浅葱??あんた達はどこをふらついていたんだぃ!」
簪を買ったものの、いざ渡す時になってまた不安症が再発した浅葱は結局渡すことができず、松屋に帰り着いた。
そして待っていたのは、松屋の女将、お清のお説教時間だった。たまたま居合わせてしまった客たちは、美人お上の突然の怒号に驚いたような顔をしたり、無様に茶を吹きだしたりしている。中に一人だけそれに全く動じずにのんびりと茶をすすり、他の客をほくそ笑む常連客がいる。名前は…。
「二人とも!すぐに奥の間に来なさい!!」
浅葱の思考はお清の再びの怒りの声で中断させられる。なんせ、お清の背後に蜃気楼のようにユラユラと炎のようなモナが見えたのだから仕方がない。
よく考えてみれば、ちょっと寄り道のつもりが火付けに巻き込まれたのだから時間は予定より大幅にくるっている。
そして、その結果二人が帰り着いたのはもう日が傾きかけた頃だった。
近頃は「いつ誰それの仇とか、間者とか、佐幕派やらなんやらで危ない。」なんて、赤子に言わなくても理解するようなご時世。
それも手伝って、お清の怒りはいつも以上。奥の間で二人は畳に正座してその説教をうなだれて聞いている。
「夜がどれだけ危険が知らないあなたたちじゃないでしょ!ましてや刀持ちが襲ってきたらあんた達じゃ何もできないのよ??それがわかってるの??」
<ケケケ、浅葱、ざまぁ!>
お清の説教に混じって白夜は大爆笑している。
ちなみに、暖簾の影からは奉公人達がこそっと覗いている。
一太郎はと言うと、驚かしてしまった客にひたすら頭を下げている。
(白夜…後で仕返ししてやる…。梅吉たちも…怒られればいいのに…。)
「浅葱??聞いてるのかぃ!」
「はい!聞いております!」
その様子に白夜はさらに大爆笑。
「後で覚えてろよ…。」<ケケケ、やなこった。>
結局その説教は見かねた一太郎が止めるまで続いたのだった。
浅葱、お空どちらも足がしびれてしばらく動けなくなった。
もちろん、白夜は大爆笑。
浅葱は奉公人達にさんざんからかわれたのだった。
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